夜にしか会えない魔女は夜がキライ
「今日の体育祭は雨のため延期になりました」

えぇ~~~~~!
と教室に誰に対してでもないブーイングが起こる。 

あんなにすこぶる天気がいいと言っていた天気予報が強引に方向転換した。土砂降りで窓の外は横殴りの雨だった。

「だから今日は授業になります」

えぇ~~〜〜~~~!!
ってさっきよりブーイングが増したかもしんない。

中野先生がはいはいってなだめてる。みんな今日のために練習して来たし準備して来たし、それが来週になるって言われたらモチベーションは下がるよね。それはわかる。

「このままずっと雨で中止にならないかなぁ」

「こんちゃん…、綱引きさえもやりたくないんだ?」

こんちゃんみたいなアンチ体育祭派もいるけど、たぶんみんな今日は体育祭の気分で。

少し残念に思ってた。

穂月との体育祭は初めてだったし、リレーは絶対応援してほしかったのに。

でもこれもしょーがないか、また来週…


「十六夜のせいじゃねぇの」


後ろの席から聞こえた声にザワッと教室中が振り返った。


お、大村~~~~~~~~~!!!!!


お前はいつもいっつも…!

黒猫のカラスのこといじめてたのもまだ許してないからなっ!

てゆーか穂月のせいってっ

「あいつのばーちゃん魔女なんだろ?」

さらに教室内がざわざわした。満月おばぁちゃんは近所でも有名な魔女、あくまで近所だから知ってる人もいれば知らない人もいる。

「じゃあお前も魔女だろ」

しーんとした教室で大村の声がよく通った。

でもそれは、今日の雨と何ら関係はなくて。

「十六夜くん魔女なの?」

こんちゃんがこそっと聞いて来た。

いや、魔女…
うん、魔女…
えっとなんて答えたら…っ

「何も言わねぇってことはそうなんだ」

「大村くんやめなさい!」

中野先生が止めに入ったにもかかわらず大村はペラペラと喋ることをやめない。穂月はただじっと窓の外を見ていた。

「じゃあこの雨は十六夜のせいだ、十六夜が降らしたんだ!」

それ梅雨だからじゃん!穂月関係ないから!!

何言ってるの、勝手なこと…っ

ガタッとイスを引いた。

大村に変なこと言わないでよ!って言い返そうかと思って、だけど…


「魔女は災害を引き起こすんだろ?」


え…?


引くだけ引いたイスから立ち上がれなかった。

「グラウンドから応援するとか言うからこんなことになったんだろ!?」

災害を引き起こす…

ってなに?魔女が?災害を?


そんなわけ…!
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