夜にしか会えない魔女は夜がキライ
「朝見さん!」

1階に着く最後の階段を下りた時、廊下を歩いて来た中野先生に呼び止められた。

「今日は部活も休みなのに遅かったのね」

「あーはい、図書室に行ってたんで…なんですか?」

「うん、ちょっとね…十六夜くんとは何か話した?」

「穂月と…?」

あ、授業無理やり抜け出したやつだ!
頭痛いなんて大嘘ついて教室から出て行ったから、中野先生気にしてたんだ…!

「あ、あれはっ…まぁなんか…」

説明が難しい。

今ここで魔女狩りの話する?違うよね??

「えっとー…」

「先生ね、最初からテントはない方がいいと思ってたのよ」

「え…?」


あたしは穂月にも参加してほしかった。

体育祭を見てほしかった。


1人で保健室にいないでほしかった。


それだけだったの。


「どうして…ですか?」

「だってみんな元気に走ってる姿見たら辛いでしょ?」


…そんなこと考えてなかった。

一緒に楽しめるもんだと思ってた。


そこにいるだけで、体育祭を感じられるものだと思ってた。


“それは…大丈夫だけど、十六夜くんはそれでいいの?”

だから穂月に聞いたんだね。
あたしが何もわかってなかったから。

そこに穂月の気持ちは…

“え…あ、はい”



それから穂月は保健室にいることが増えた。 

来週に延びた体育祭の練習の日々で、保健室にいることしかできなかったから。
< 41 / 79 >

この作品をシェア

pagetop