夜にしか会えない魔女は夜がキライ
リレーの前は念入りにストレッチをして、バトン渡しを失敗しないように頭の中でシミュレーションする。


アンカーはあたし。

どんな順番で回って来ても諦めない、最後まで全速力で走る…!


ピストルの音で第一走者が走り出した、あたしに回ってくるまで4人…

スタートは結構いい感じだ。

そのまま、そのまま…

2位なら全然…


あ、抜かれた!


でもまだ…っ

「がんばれぇーーー!!!」

お腹から声を出して声援を送る、練習したバトン渡しは上手くいってるもんねよかった。


じゃあ、あとは…

よしっと気合いを入れて位置に着いた。


あたしが走るだけ。


「緋呂っ」

「はいっ!」

ガシッと掴んだバトンを離さないように、しっかり腕を振ってまっすぐ前を向いて足を動かす。


背中は見えてる、このまま捕らえられるあたしなら…!


きっとあたしが今どこを走ってるかわからないと思う。

でも、もう少し待ってて。

絶対追い越して見せるから、目を離さないで。


1人目を追い越してもう1人、あと一歩踏み切れば…!


…ダンッ 


ヒラッとテープが浮かぶ、あたしの体に当たってスゥーッと消えていく。



切れた…っ!!!



あたし、…っ
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