夜にしか会えない魔女は夜がキライ
軽い気持ちだったよね。

一緒に楽しめたらいいなって、穂月もいてくれたらいいなって思ってただけなの。


体育祭の時からあたしはずっとそればっかりだ。


苦しそうに眠る穂月を見て胸が締め付けられる。

振り回してばっかりだ、いつもあたしが勝手に…


帰ろう、離れよう。

ここにいるのはよくない。


「緋呂…?」

「穂月…!」

立ち上がろうとして正座から足を立てた時、穂月が眉間にしわを寄せながら目を開けた。

「穂月大丈夫!?ごめんね、あたしっ」

「悪い、迷惑かけた」

「…っ」

のそのそと重そうに体を起こして、痛むのか頭を押さえた。

「まだ寝てた方がいいよ!」

「いや、もういいから」

「よくないよっ」

寝るように促しても穂月はベッドに座り、ふぅっと熱っぽい息を吐いた。

「まだ…大丈夫だと思ったんだけど見極めるのって難しいな、気付いた時には遅くて」

顔が見られなくて目を伏せる。

「だから緋呂に迷惑かけて」

「違うよ」

これって何回目だろう?

どうしてあたしは同じことばかり繰り返しちゃうのかな。迷惑かけたのはあたしだよ。

「あたしが気付けなかったから…ごめんなさい」


ずっと穂月に来てほしいって思ってた。

いつか大会に来て、あたしの走る姿を見てほしいって。

遠くからでもいいって思ってたのに、行くよって言ってくれてうれしくてしょうがなかったんだ。


浮かれ過ぎちゃった。

どうしてあたしはこうなんだろう。


「いや、自分の体力過信してた俺が悪いから」

「……。」

「もっと体力付けてくよ、来週までに…は間に合うか?いや、間に合わせなきゃだけどそんな急には無理か?まぁそれなりに対策して…」

こんなことばっかりだ。もうやめなきゃ。

「今度はっ」

「もういいよ」

「え…?」

「もう来ないでいいよ」

静かに発した、俯いたまま。

「は、なんだよ急に…」

「穂月に来てほしくない」

全部あたしのわがままだった、もういい加減気付いてあたし。
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