夜にしか会えない魔女は夜がキライ
大村が下駄箱から離れて教室へ向かう階段の方へ歩き出したから急いで上履きを履いて駆け寄った。

「追いかけてくんな!」

「おんなじクラスだもん、しょーがなくない?」

まぁちょっと追いかけたけど。

「ねぇ大村はさ、魔女はどんな存在だったと思う?」

「だからいねぇっつてんだろ」

「…魔女って可哀相だよね」

魔女狩りとか裁判とか、ただ殺されていったみたいで。


あたしはどうしても穂月と重ねちゃうんだ。


「何言ってんだお前、そんなタマかよ」

ケッと息を吐かれた。

「悪魔に魂売ったヤツらがそんなわけあるか!可哀相なんて言ったらこっちがやられるぞ!」

「やっぱいるって信じてるじゃん」

「信じてねぇよ!」

両手をズボンのポケットに突っ込んで気だるそうに階段を上がる後ろをついてあたしも階段を上った。

「あいつのばーさん」

「え?あ、満月おばぁちゃん??」

「全身真っ黒の闇みたいな服ででっかい傘さしてよく猫と話してんじゃん」

「あぁ…おばぁちゃんも太陽ダメだけど猫は大好きだからね」

「どっからどう見ても強そうだし魔女狩りにあったとしても逆に狩ってそうじゃん」

…まぁ見た目そうだけど、おばぁちゃん結構ガチっとしてるし声大きいし力あるし。いや、でも逆に狩ってそうって!?

「優しいから満月おばぁちゃんは!」

「だから万が一裁判にかけられてもねじ伏せられるから大丈夫だろ」

「満月おばぁちゃんのことなんだと思ってんの!?」

振り向きもしないでガンガン階段を上っていく後姿につい大声で言っちゃった。

見た目はそうかもしんないけど、満月おばぁちゃんに頼って来る人はいっぱいいるんだから!町の人気者なんだからね!

「てゆーかそんな恐れる存在でもないもん」

悪いイメージのが先行しちゃってるんだ、魔女は怖いとか悪魔に魂売ったとか…全然そんなことないのに。

「優しいからね、魔女は」

「嫌われて殺された魔女が優しいわけねーだろ」

「……。」

聞けば聞くほど詳しいなって思っちゃうんだけど…

「まぁでも猫には優しいんじゃねーの?」

「……猫?」
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