夜にしか会えない魔女は夜がキライ
いつもより少し遅れて教室に着くとまだ穂月は来ていなかった。穂月も今日は遅いのかなって思ってたら、チャイムと同時入って来た先生に休みだって言われた。

…昨日ケンカしたまま、今日は休みなんだ。
時間が経つとどんどん会いにくくなっちゃうな。

「どうしよう…」

いつものごとく1人の帰り道、家に近付くと増えるタメ息に迷っていた。

こ、このまま穂月の家寄ってこうかな?
隣だしね、ついでに行けちゃうからね、サッと行ってサクッと謝って来ちゃおうかな!?

謝って…、謝った方がいいよね。

でも何を謝れば…

「緋呂おかえり!」

穂月の家の前でピンポンを押そうかどうか迷っているとガラガラッとドアが開いて薬草の匂いがぷんっと鼻の奥を突いた。

「満月おばぁちゃん…っ」

「何してるんだい、そんなとこで」

「えっと、あのっ」

いつもならこんなことで立ち止まることなんかない、ピンポン押すのにこんなに戸惑うこと…

「今からハーブティー作るんだよ、緋呂も手伝っておくれ」

「え、ハーブティー??」

早く早くと急かされ中に入った。

赤とか黄色とかの液体がフラスコの中でコポコポ音を出して、机の上は見たことのない薬草がいっぱい用意されたおばあちゃんの部屋はもはや何の匂いかもよくわからない。別に嫌な匂いじゃないけど。

部屋っていうか理科の実験室みたいだよね、なんか薄暗いし。

「緋呂はこれを()ってちょうだい」

いくつかの薬草の入ったすり鉢とすり棒を渡された。
これをゴリゴリすればいいのかな、まんま草の形から始めるってめっちゃ大変そうだけど…

「わかった!」

ちょっと楽しそう!!

グッとすり棒を構えて、力いっぱいすり鉢の中で円を描くようにゴリゴリ薬草を潰した。潰した瞬間からぶわっと匂いがすごくてぷんっどころかツーンって感じでダイレクトに鼻に入って来る。

すごっ、きっつ…

ハーブティーはおいしいけど、薬草から作るってこんな感じなんだ。

「ほらほらそんなんじゃ足りないよ、もっと腰を入れて腕だけじゃなく肩から力入れるんだよ」

言われたようにがっちり腰に力を入れて肩から力をすり棒に込めてグーッとゆっくり力強くこする。

これは本当に大変!

まだ全然形残ってるし、あと何回ぐらい回せばいいんだろ?

回してる間に筋肉痛になりそう…!
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