夜にしか会えない魔女は夜がキライ
「座って、緋呂」

「え?」

「そんな足じゃ辛いだろ」

ぐるんぐるんの包帯剥きだして出て来ちゃった、そりゃ目立つよね。何も言わなくてもケガして出られなくなったのは誰が見てもわかる状態だもん。

3段の階段をイス代わりにして足を前に出すように腰を下ろした。

座ったあたしの前に穂月がしゃがみ込んで、そぉっと足に触れる。

ここまで歩いて来たから痛くてしょうがなかったけど、それは不思議と痛みを感じなかった。触れられてるのもわからないぐらい、なんとなく冷たくて気持ちよくて。

「すげぇ腫れてんな」

「思いっきり踏み込んじゃったの!」

「あれだけ気を付けろって言っただろ」

「だって昨日は言ってくれなかったもん!」


昨日は穂月に会えなかった。

体調を崩して学校を休んでた日からずっと。

結局あの日は今寝てるからって月華ママに言われて帰るしかなくて。


だから夜の散歩だって行けるわけなくて。


満月おばぁちゃんとハーブティーを飲んで帰るだけになっちゃった。


それからずっと…



会えてなかった。



「穂月…、ごめんね」

また涙が流れ出す。

「あたし穂月のこと傷付けた…」

「いいよ、別に気にしてないから」


穂月に見てほしいって思ってた。

いつか応援しに来てほしいって思ってた。


だけど本当はそんなことどうでもよかった。


「あたしね、穂月といられたらどこでもいいよ」

止まらない涙を両手で拭いて、消えそうな声を振り絞って。

「一緒に学校行けなくてもいい、大会見に来てくれなくてもいい、夜しか会えなくても…」

声が詰まりそうになって、すぅって息を吸った。

「穂月があたしといてくれるなら何でもいいよ!」


ただただもっと一緒にいたかっただけ。

だからどこでもいいの。


どうでもいいんだよ、穂月がいてくれるなら。
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