大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜
「これまで誰にも尻尾を掴ませなかった不知火にとって、相当の屈辱だったはずだ。朝晴は一矢報いていたんだ」
「お兄ちゃん……」
燈里は拳を握りしめ、唇を噛み締める。
「だが、そのことを恨んで朝晴の家族に復讐しようとしているのかもしれない」
「えっ!?」
「事件当時、朝晴の家族のことは伏せるようにしていたが、どこからか君たちのことが知られてしまったのかもしれないんだ」
「な、なんで……」
「水鏡燈里さん、君のこともお母さんのことも絶対に守る。我々警察を信じてくれないか」
嶺士はやはり眉一つ動かさない無表情だった。
だが言葉尻には力強さが窺え、真剣だということが伝わってくる。
その真摯さには胸を打たれるものがあったが、素直に受け取れない葛藤もあった。
「……別に警察を信用してないわけじゃないですよ」
「そうか。できればしばらくの間、仕事は休んで欲しいのだが」
「休む?そんなことできません!私は保育士です」
思わず大きな声をあげてしまった。嶺士は表情を変えず、声のトーンも崩さない。
「それなら君の仕事中も刑事に張り込ませることになるが」
「冗談じゃありません!強面の刑事さんたちが園の近くで張り込んでいたら子どもたちを怖がらせるかもしれませんし、保護者にも不安を与えます。同僚の先生たちにだって迷惑をかけるかもしれませんし……」