大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜
事情を説明しようにも、命を狙われているかもしれないから警護してもらっているだなんて口が裂けても言えない。
それこそ不安を与えてしまう。
だが子どもたちが巻き込まれるかもしれないと考えたら……想像しただけで恐ろしかった。
一体どうすればいいのかと唇を震わせる。
「それなら、この話を飲んでもらった方がいいな」
「この話?」
「ああ、俺と結婚しないか」
嶺士の言葉を理解するのにたっぷり一分程かかった。体感ではそれ以上かかっていた。
突如放たれた脈絡のない突拍子もない話に頭が追いつかない。
なのに目の前の男は整然とした態度を保っている。
おかしなことなど何一つ言っていないと言いたげに。
「……ご自分が何を言っているのかわかってますか?」
「ああ」
「結婚?私のことバカにしてるんですか?」
燈里は沸々と怒りが湧いてくるのを感じていた。
冗談なのだとしたらかなりタチが悪い。
「大真面目に言っている。君が俺の、満咲家の妻だとわかれば向こうも簡単には手出しできないはずだ」
「どういう意味ですか?」
「俺の家は代々警察官でね。兄は将来の警視総監だと言われている。そんな家の妻に手出しできる程のリスクを負えるとは思えない」
「だからって結婚だなんて……!」
「これは君だけのためじゃないんだ。君の母親も同じように狙われているのだからな」