大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜


「ありがとう」
「だけど、あなたを愛することはありませんから」
「わかってる。俺のことは憎いままで構わない。許して欲しいとも思っていない。
 だが、君もお母さんのことも絶対に守り抜くと誓う」


 こうして燈里は大嫌いな人と結婚することになった。
 天国の兄は何と言うのだろうと思いながら、それでも後戻りはできないと思った。

 嶺士と結婚することになったと母の智佳子に話すと、智佳子はものすごく驚いていた。
 戸惑いを隠せないといった様子の智佳子に、嶺士は語りかける。


「実は初めて会った時から燈里さんに惹かれていました。自分のような者が燈里さんに相応しくないことはわかっています。ですが、必ず幸せにし何があっても守り抜くと誓います」
「嶺士さん……」


 よくもそんな嘘が言えたものだと燈里は苛々した。
 いくら智佳子に心配をかけさせないためとは言え、思ってもいない妄言をつらつら並べられるだなんて。益々嫌いだと思った。


「燈里、あなたはいいの?」


 不安そうに尋ねる母に向かって、ニコリと微笑む。


「ええ、もちろん」
「そう……」


 智佳子はどこか納得いかない表情を浮かべていたが、「娘をよろしくお願いします」と頭を下げた。

 その後、すぐに満咲家に結婚の挨拶に行った。
 満咲の邸宅は西洋風の大きな屋敷で、観光名所だと言われても全く疑わない程の立派な屋敷だった。
 庭は広く、噴水まである。ここだけおとぎ話の世界に飛び込んだようだ。
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