大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜
フィクションの世界だけの存在だと思っていた、執事やメイドが大勢いる。皆燈里に向かって恭しくお辞儀してくれるので、燈里は恐縮してしまった。
満咲家が旧華族の末裔で大変な名家だというのは本当のようだ。
嶺士の父は警察庁長官、母は元総理大臣の娘だという折り紙付きのエリートだそうだ。
改めてとんでもない家に嫁ごうとしているのではないかと、今更ながらに怖気付いていた。
どんなに厳しい人物なのだろうと思っていたが、嶺士の父も母も温かく燈里を迎え入れてくれた。
朝晴のことについてはお悔やみの言葉を述べた上で、それでも嶺士の妻になることを決めてくれたことに深い感謝を述べられた。
燈里は苦笑いを浮かべるのに必死だった。
(本当は契約結婚なのに)
それからとんとん拍子で結納を行い、いつの間にか結婚式の準備が進んでいた。
てっきり式は挙げないものと思っていたが、そうはいかないようだ。満咲家の子息が結婚するのに、何もしないというのは難しいらしい。
こんなことになるとは思っていなかった燈里は、やはり血迷った選択だったかもしれないと頭を抱えた。
だが、そうも言ってはいられない。
母のためにも満咲家の嫁だと知らしめないといけないのだから。