大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜
「子ども……ですか?」
「ああ」
「子ども、欲しいんですか?」
「当然だろう」
さも当たり前だと言うように嶺士は至って真面目な表情をしていた。
「えっ待ってください、私たち契約結婚ですよね?」
燈里は例のボス・不知火を逮捕するまでの関係だと思っていた。
身の危険が回避されるのであれば、夫婦関係を続ける必要性はない。不知火が逮捕されたら離婚するつもりでいたのだ。
「契約結婚だろうが、夫婦であることに変わりはない」
普段は氷点下の如く冷たい瞳をしている嶺士だが、この時は瞳に熱が孕んでいた。咄嗟に燈里はやばい、と思ったがもう遅い。
あっという間にベッドに押し倒されてしまった。
「……燈里」
初めて呼び捨てで呼ばれた名前に、燈里の心臓はドクンと大きく高鳴る。
そのまま頬を撫でられ、顎をくいっと持ち上げられる。
触れられたところが麻痺したみたいにピリッと痺れ、思わず目を瞑ってしまった。瞑ってしまってから、これはやってしまったと後悔する。
二度目の口付けは触れ合うだけのものではなかった。
形式的なものではなく、ゆっくりと燈里の唇を味わうかのようなキスだった。
絶対に口を開けるものかとキツく結ぼうとするのに、唇を食まれる度に蕩けそうになり、緩んだ隙に舌をねじ込まれる。
「んっ、あ……っ」
そこから先は、ひたすら嶺士の指や舌に翻弄された。
反抗する姿を見せる度、嶺士はもっと燈里の体を虐め抜いた。
燈里は悔しくて仕方なかった。
大嫌いなはずなのに、嶺士から与えられる快感に抗えないことが。とろとろになるまで蕩けさせられてしまったことが、憎らしくて仕方なかった。