大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜

 差し伸ばした腕はいとも簡単に捕まえられ、抵抗は拒まれる。掴まれた手首に口付けられる。

 そのままするりと長い指が燈里の指先と絡み合い、まるで手錠を掛けられたみたいに動けなくなる。
 その隙にもう片方の指先が、燈里のショーツの中へと侵入した。

 嫌だ、ダメ、やめて。
 そんな思いで必死に足を閉じようとしても、指先で掻き乱されて力が抜ける。
 その間に再び唇を奪われて、もう燈里の体は完全に支配されてしまう。


(どうしてこんなことになってしまったの……?)


 頭ではこんなことは望んでいない。抵抗して今すぐ逃げ出したいと思っている。
 それなのに彼の愛撫を受け入れてしまっていることが、悔しくて憎らしくてたまらなかった。

 せめてもの反抗心で彼の唇を思い切り噛む。


「……まだそんな余裕があったのか」


 男の唇からはわずかに血が滴った。しかし些細なことだと言わんばかりに指で拭い取り、再び燈里に覆い被さる。
 先程よりも強く激しく舐められ、吸われ、ぐちゃぐちゃになるまでかき混ぜられる。


「……らい、あなたなんか、きらい……っ」


 こんな憎まれ口も意味をなさないとわかっている。
 だがこれが、燈里の精一杯の抵抗だった。

 契りを結んでも体を繋げても、心までは渡さない。
 燈里はそう強く誓いながら、この世で一番大嫌いな人とひとつになった。
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