大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜
出て行こうとする九原を咄嗟に止めた。
「もし危ない人だったら何されるかわかりません!」
「でも、このまま放っておくわけにも」
燈里は自分の命を狙っているかもしれない人物かもしれないとは、到底言えなかった。
「……夫に相談してみます。警察ですから」
顔が青くなり、指先が震えているのを感じながら電話をかけた。
今頃勤務中かもしれない。電話に出られないかもしれないと思ったが、ワンコールで出てくれた。
『燈里、どうかしたか?』
「嶺士さん……!実は……っ」
保育園の近くに不審者がいると話すと、嶺士はすぐにそちらへ向かうと言ってくれた。
本当にものの数分後には車で駆け付けてくれた。
流石の燈里も嶺士の顔を見て安心した。
「嶺士さん……!」
「大丈夫か、燈里!」
「あ、私……」
「もう大丈夫だ」
嶺士は大きな腕を回し、燈里を包み込むように抱きしめた。
まるで幼い子どもをあやすように、優しく背中をさする。
「今部下たちが周辺を捜索している。怖い思いをしたな」
「はい……」
いつもは淡々としているのに、この時ばかりは穏やかで優しい口調だった。
彼の胸の中にいると、安心して思わず涙がこぼれる。
嶺士は燈里が落ち着くまでずっと優しく抱きしめてくれた。