大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜
燈里が落ち着くのを待って、嶺士は車で送ってくれた。
「……あの、ありがとうございました」
その後、周辺を捜索したが先程の男は既に立ち去ってしまったようで見つけることはできなかった。
それでも刑事たちが聞き込みを続けてくれている。
まだまだ不安は残るが、ひとまず嶺士たち警察が来てくれたことが心の支えとなっている。
「当然だ。何があっても守り抜くと言っただろう」
(そうか、私を守ることがこの人の仕事なんだった……)
改めて嶺士は何故自分と結婚したのだろうと考えた。
もしかして嶺士なりに朝晴のことで償いをしたいと思っているのかもしれない。
血も涙もない冷酷な人物だと思っていたが、それ程でもない。
だが、結局のところ燈里と結婚したのは義務感なのだろうと思った。
子づくりのことも含めて、全てが義務なのだ。
(別にそれでいい。愛なんて最初から求めてないし、私もこの人を愛することなんてない)
そう思うのに、何故か燈里の心にはぽっかりと穴が空いていた。
* * *
「蜂蜜を入れたミルクティーだ」
帰宅して一息ついていた燈里の目の前に、湯気が立ち込めたマグカップを置く嶺士。
燈里は驚いて嶺士の顔を見た。
「私が蜂蜜を入れたミルクティーが好きだって、どうして知ってるんですか?」
「朝晴から聞いた」