大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜
あまりにもらしくない台詞に思わず咽せそうになった。
相変わらずの無表情で何を言い出すのだろう。
何を考えているのかわからない氷のような眼。
その瞳に熱が帯びる瞬間を、すぐに感じ取れるようになっていた。
その瞳で見つめられると、金縛りになったみたいに動けなくなる。
嶺士は優しく頬に触れる。まるで割れ物を扱うかのような、大事そうに。
僅かにくすぐったくて思わずビクッと反応してしまう。
「んっ」
目を瞑った数秒の間に嶺士の冷たい唇が重なっていた。
角度を変え、小鳥が啄むように何度も口付ける。
口付けが深くなっていく度に、意識がぼうっとしていく。
歯並びを舌で丁寧になぞり、どちらの唾液かわからなくなるまで舌を絡ませ合う。
嶺士の気持ちがわからない。何を考えて燈里に口付け、抱いているのか全くわからない。
子どもをなすための義務的な行為なのだとしたら、こんなに情熱的な口付けなんて必要ない。
それなのに嶺士は何度も唇を貪り、舌で舌を絡め取る。
まるで愛している、と伝えているかのように。
(そんなはずない……嫌い、なんだから)
兄を見殺しにした男なのだ。
この男を許してはいけない。
なのに、彼の熱い唇を享受していると目眩がする。
決意が揺らぎそうになる。
抗えば抗う程、嶺士のことを求めてしまっている自分に気づかぬフリをした。