大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜


 九原、いや不知火はニッコリと笑みを浮かべながら、燈里に銃口を向けた。
 燈里は全身の力が抜けて思わず倒れ込んでしまった。


「あ、あ……っ」


 助けを呼びたくても、声が上手く出せない。
 子どものお昼寝タイムだ、他の先生が通りかかることもないだろう。


(誰か助けて……嶺士さんっ!!)


 不知火は恐怖に震え、涙を浮かべる燈里を楽しそうに見下ろす。銃口は燈里から狙いを外さない。


「大丈夫、一発で確実に楽にしてあげますよ――あなたのお兄さんと同じようにね」
「い、いや……」
「あ、ご心配なく。サイレンサー付きなので寝ている子どもたちは起きませんから」


 もうダメだと思った。
 不知火は引き金を引く。燈里はぎゅっと目を瞑った。


(お母さん、嶺士さん……)

「燈里っ!!」


 バァン!と勢いよく扉が開くと共に、燈里の名を叫ぶ声が轟いた。
 ハッと振り返ると、そこにいたのは拳銃を構える嶺士だった。


「れ、嶺士さん……」


 嶺士は銃口を不知火に向けたまま、庇うように燈里の目の前に立つ。
 未だに腰が抜けて動けずにいるが、嶺士が来てくれたことで恐怖心は和らいでいた。
 どうして駆け付けてきてくれたのかはわからなかったが、そんなことはどうでもいい。助けに来てくれたことが嬉しかった。


「不知火、もう逃げられないぞ」

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