大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜
ドスの効いた低い声で睨む嶺士。
すぐに他の刑事たちも駆け付け、一斉に不知火を取り囲むと拳銃を向けた。
「貴様だけは絶対に逃がさない。銃を降ろせ」
流石に八方塞がりかと思ったのか、不知火は銃を落として左手を挙げた。
やはり右腕は挙がらないようだ。
すぐに刑事たちが不知火を取り押さえる。
取り押さえられても不知火は表情を崩すことはなかった。
「燈里!!無事か!」
「嶺士さん……っ」
常に無表情の嶺士が、本気で焦って心配している表情を見たのは初めてだった。
嶺士は燈里を引き寄せ、強く抱きしめる。
「間に合ってよかった……」
「っ、嶺士さん……!」
涙を流しながら嶺士にぎゅっとしがみつく。
心の中で何度も呼んだ。本当に来てくれるなんて思っていなかった。
「実は、これを付けていたんだ」
嶺士は燈里の服の襟の後ろから、小さくて黒い丸いものを取って見せる。見せられたものが何かわからない上、こんなものが襟に付いていたとは知らなかった燈里は困惑する。
「小型盗聴器だ」
「と、盗聴器ですか?」
「悪いとは思ったが、何が起こるかわからなかったからな。連絡できない状況に陥った時、すぐにでも駆け付けられるようにしたかった」
そう言われて燈里はハッとする。
行ってらっしゃいのキス、もしかしてあの時にこっそり取り付けていたのではないだろうか。