大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜
抗えない想い side.嶺士
満咲嶺士は生まれながらにして、警察官になることを義務付けられていた。
代々警察機関の中枢を担う満咲家に生まれ、幼少期から「将来は立派な警察官になれ」と教えられてきた。
そのことに疑問を抱いたことはない。嶺士にとっては当たり前のことであり、その道に進むことこそ己の使命とすら思っていた。
嶺士が十八歳の時、迷子になったらしい小学生くらいの女の子と出会う。
「おかあさん、おにいちゃん」としきりに呼び続けては号泣しており、嶺士はその子に声をかけた。
どちらかと言えば子どもは苦手だったのだが、スルーすることもできなかった。
「迷子になったのか」
「ちがう、お母さんとお兄ちゃんが迷子なの!」
明らかに自分が迷子になっているのに、その子は泣きながらも強がっていた。
「お兄ちゃん、ともりがいなくてさみしがってるから、早く行ってあげなきゃいけないの」
そう言ってグズグズ泣いている。
こんなにも号泣しているのに、そこまで強がれるのが面白いと思った。
「わかったわかった、君のお兄ちゃんを探せばいいんだな」
「さがしてくれるの?」
「ああ」
嶺士は父の知り合いの刑事に連絡し、迷子の女の子を保護したから母親を探して欲しいと連絡した。
「君の名前はなんというんだ?」
「ともり、みかがみともりだよ」
嶺士は名前とともりの特徴を伝えた。
すぐに似たような女の子を探している人がいないか調べてみる、と言ってくれた。