大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜

抗えない想い side.嶺士



 満咲嶺士は生まれながらにして、警察官になることを義務付けられていた。
 代々警察機関の中枢を担う満咲家に生まれ、幼少期から「将来は立派な警察官になれ」と教えられてきた。

 そのことに疑問を抱いたことはない。嶺士にとっては当たり前のことであり、その道に進むことこそ己の使命とすら思っていた。

 嶺士が十八歳の時、迷子になったらしい小学生くらいの女の子と出会う。
「おかあさん、おにいちゃん」としきりに呼び続けては号泣しており、嶺士はその子に声をかけた。
 どちらかと言えば子どもは苦手だったのだが、スルーすることもできなかった。


「迷子になったのか」
「ちがう、お母さんとお兄ちゃんが迷子なの!」


 明らかに自分が迷子になっているのに、その子は泣きながらも強がっていた。


「お兄ちゃん、ともりがいなくてさみしがってるから、早く行ってあげなきゃいけないの」


 そう言ってグズグズ泣いている。
 こんなにも号泣しているのに、そこまで強がれるのが面白いと思った。


「わかったわかった、君のお兄ちゃんを探せばいいんだな」
「さがしてくれるの?」
「ああ」


 嶺士は父の知り合いの刑事に連絡し、迷子の女の子を保護したから母親を探して欲しいと連絡した。


「君の名前はなんというんだ?」
「ともり、みかがみともりだよ」


 嶺士は名前とともりの特徴を伝えた。
 すぐに似たような女の子を探している人がいないか調べてみる、と言ってくれた。

< 32 / 53 >

この作品をシェア

pagetop