大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜
ともりの情報を伝える中で今十歳であること、今着ているさくらんぼ柄のワンピースは母親のハンドメイドだということがわかった。
「お母さん、洋服が作れるなんてすごいな」
「そうでしょ?うちはビンボーだから、お母さんがつくってくれるんだ。これはね、もともとカーテンだったの」
カーテンの生地から作られたというワンピースは、店で売られていても遜色ない程に見事なものだった。
ともりはとても嬉しそうに、そして誇らしげだった。
「ともりも大きくなったら、お母さんみたいにお洋服つくるんだ」
「洋服を作る人になりたいのか?」
「うーん、わかんない。ともりね、いっぱいなりたいものあるの!お洋服屋さんにもなりたいし、ケーキ屋さんにもなりたいし、お花屋さんにもなりたい!」
無邪気に笑うともりを見て、嶺士は純粋に驚いた。
自分は十歳の頃、既に警察官になると決めていた。他の選択肢なんて考えたこともなかった。
だけどこの子の未来には、様々な選択肢がある。
一つになんて決められないくらい、沢山やりたいことがあるのだ。
それが何だかとても眩しく感じた。
「お兄ちゃんは、なにになるの?」
「俺?俺は、警察官」
「けいさつかん?」
「おまわりさんのこと」
「おまわりさん!」
それを聞くと、ともりはパアッと笑顔を咲かせる。