大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜
「すごいね!おまわりさんは、せいぎのヒーローだね!お兄ちゃん、ヒーローになるんだ!」
警察官が正義のヒーロー。今までそんなこと考えたこともなかった。
祖父も父も兄も警察官で、自分も当たり前のように目指していて。これが満咲家に生まれた者の使命であり、誇りなのだと。
そんなことしか考えたことがなかった。
(このまま警察官になっても、俺はこの子の言うような正義のヒーローになれるのか?)
警察官になるという意味を、その時初めて考えさせられた。
こんなに無邪気な少女の目には、正義のヒーローだという風に映るのだと初めて知った。
自分はその期待に恥じない警察官になれるのかと、自問自答してしまった。
その後母親が迎えに来て、ともりは無事に帰ることになった。
あんなに強がっていたのに、母親を見つけると一目散に駆け出してわんわん泣いていた。
でも帰る頃には笑顔だった。
「ばいばい、お兄ちゃん!ありがとう!」
見送りながら嶺士は考える。
あの子の笑顔を守れるような警察官、正義のヒーローに自分はなれるのだろうかと。
その後嶺士は意識を変えた。
まず元々志望していた私立大の受験を辞め、国立大の法学部受験に切り替えた。
高校三年になってからの進路変更、それも最高学府への受験ということで周囲には驚かれたし、心配もされた。
だが猛勉強の末に現役合格を勝ち取る。