大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜


 今までは敷かれたレールの上を進んでいくだけだった。
 だが、それだけではダメだと思った。
 警察官は、犯罪から市民を守る正義のヒーロー。
 その責務の重さを正しく理解し、全うしなければならない。

 嶺士は大学を首席卒業し、在学中に国家公務員試験に合格。
 その後警察学校に入学して出会ったのが、水鏡朝晴だった。
 水鏡という苗字に聞き覚えがあった。


「俺には妹がいるんだけど、その妹が警察官は正義のヒーローなんだよねって言ってさ。その言葉に感化されて目指すようになったんだ」

(やはり、こいつの妹はあの時の……)


 朝晴は聞いてもいないのによく妹の話をした。
 妹がお弁当を作ってくれたのだと、デレデレしながら自慢してきたこともある。

 朝晴の話に聞く燈里は、明るく真っ直ぐに成長しているのだとわかった。
 出会った頃はやりたいことが沢山あると話していたが、今は子どもが好きで保育士を目指しているらしい。


(あの子は自分だけの道を見つけて、未来に向かって進もうとしているのだな)


 そう思うと、自分ももっと頑張らなければいけないと奮い立つ思いがした。

 所轄に配属になり、キャリアである嶺士は警部補からスタートになる。
 警察界隈において満咲一族はただでさえ有名であり、嶺士に対する周りの視線は期待もやっかみもあった。

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