大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜


 そんな周囲の声になど惑わされず、嶺士はひたすら自分の職務を全うする。
 瞬く間に出世していき、警視庁に転属になり警視に登り詰めるまで異例のスピードだった。

 朝晴も警視庁に転属となり、久しぶりに再会する。同期ながら上司と部下という関係になった。
 少し複雑さがあったものの、朝晴はまるで気にしない。


「お前が上司なら安心だ!よろしくな、満咲警視」


 むしろそう言って笑っていた。
 彼のそういう大らかな性格はとても好ましく思っていた。

 ある日、朝晴の忘れ物を届けに妹が訪ねてきた。
 嶺士にとっては迷子を助けたあの日以来の再会となった。
 大人になった彼女の姿を見て、嶺士は思わず息を呑む。

 彼女は見違える程綺麗な大人の女性に成長していた。
 だけど、どこかあの頃の幼い面影を残している。


「いつも兄がお世話になっております。これ、よろしければ差し入れです。皆さんで召し上がってください」


 そう言っておにぎりを差し入れてくれた。
 花が咲いたような笑顔は初めて会った頃と変わらない。だがあの頃よりずっと美しい。


「……っ」


 年甲斐もなく心惹かれた。
 年下の、しかも親友であり部下でもある男の妹だ。
 初めて会った時はまだ小学生の女の子だったのに、どうしようもなく惹かれてしまった。

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