大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜
保育士になる夢を叶えたと朝晴から聞き、密かに彼女が勤める保育園まで見に行ったことがある。
ストーカーじみた行為に我ながら呆れつつ、足の赴くままに訪れていた。
「ともりせんせーがおにー!」
「よーし先生が鬼だぞ〜!」
「きゃ〜〜!!」
子どもたちと一緒になって、全力で遊ぶ姿は嶺士の瞳に眩しく映る。
子どもたちに囲まれ、楽しそうな笑顔で駆ける彼女の姿が脳裏から離れない。
嶺士のことは覚えていなかったが、それでも良かった。
覚えていたからとて、何かが変わったとは思えない。
だけど、今の彼女の瞳に自分が映ることがあれば、なんて幸せだろうと思った。
(……何を考えているんだ、俺は。仮にも部下の身内だぞ)
彼女への抗えぬ想いを掻き消すかのように、嶺士はより一層仕事に打ち込む。
親からは「そろそろお前も良い人がいないのか」と聞かれるが、仕事が忙しいと適当にかわしていた。
そんな頃だった。ある巨大詐欺グループの捜査が始まったのは。
増加する詐欺事件の裏に、不知火と名乗る男の存在があることを突き止める。
だが不知火は決して自分の手は汚さず、表舞台に現れることはない。
捜査は思うように進展しなかった。
夜遅くまで調査資料を読み漁っていた嶺士のスマホが鳴る。
電話の相手は朝晴だった。