大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜
「満咲だ」
『警視!例の詐欺グループのメンバーを見つけたかもしれません!』
「何だと」
朝晴が言うには、今日の聞き込みを終えて帰宅する途中、偶然ある名前が聞こえてきた。
確かに「不知火」と聞こえてきたのだそうだ。
『今そいつらを追って○×埠頭に向かっているところです』
「待て水鏡、田辺はいるんだろうな?」
田辺というのは、朝晴とバディを組んでいる刑事の名前である。
『いや、田辺さんとは別れた後っす』
「だったら今すぐ戻れ!」
『でも千載一遇のチャンスかもしれないんすよ?この機会を逃したら、不知火の手掛かりを失うかもしれない』
「そうだとしても、危険だ。刑事が単独行動をするな」
何となくだが、嶺士の直感が危険信号を知らせていた。
このまま一人で行かせてはいけないと、警鐘が鳴っている。
「戻れ、水鏡。これは命令だ」
『でも、今この瞬間にも不知火のせいで苦しんでいる人がいるかもしれない』
「朝晴!!」
『大丈夫だ。無茶はせずに帰って来るよ、嶺士』
そう言って通話は一方的に切れる。
「クソっ!」
嶺士はすぐに他の刑事たちを召集し、自身も○×埠頭に向かった。
(絶対に無茶はするなよ、朝晴……!!)
祈るような気持ちで、真夜中の道路を車で走らせる。