大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜


 二年前から警視庁刑事課の特殊捜査係に配属される。
 その中で朝晴はある詐欺グループを追っていた。

 通常刑事は二人一組で行動するのが一般的だ。朝晴にはバディの相方がいた。
 しかしあの日、朝晴は一人だった。帰宅しようとした時、偶然詐欺グループのメンバーと思わしき人物を見つけた。

 すぐに報告した朝晴は、命令されるがまま現場に直行した。
 息を潜めて組織の取引の様子を見守っていたが、気付かれて――銃弾に撃たれて命を落とした。

 朝晴を一人で行かせたのは、上司である満咲(みつさき)嶺士(れいじ)という男だった。
 年齢は朝春と同じだが、国立大学法学部を首席で卒業し、国家公務員試験をパスした所謂キャリア組。階級は若くして警視というエリートである。

 それだけでなく、満咲家は旧華族の末裔で代々警察官という家系であり、彼の父も兄も警察官でいずれも警察の中枢を担っているという。

 燈里は朝晴の葬儀で嶺士と初めて会った。
 自分の命令で朝晴を現場に向かわせたことを謝罪された。
 謝罪の言葉は述べられたが、とても淡々としたものだった。兄から少し話を聞いており、警察学校時代は同期だったらしい。

 今は上司と部下という立場になったが、とても優秀で頼りになるやつだと朝晴は話していた。
 信頼する上司で仲間の言葉だったからこそ、朝晴は一人で現場に向かってしまったのだろう。

 だが、結果的にこの判断は大きなミスだった。
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