大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜
ここから導き出されることは、不知火は朝晴から受けた銃弾を今も体内に埋め込んだままかもしれないということだった。
馬鹿げた話ではあるが、この推測が正しければ大きな手掛かりとなる。
朝晴が残してくれた手掛かり、絶対に無駄にはしないと思った。
朝晴の命日、嶺士は墓前に線香を上げる。
後から朝晴の母と妹の燈里がやって来たのが見えて、嶺士はさりげなく立ち去った。
母親には本当のことを話していた。それでも自分の過失であることには変わりないと謝罪したが、母親は首を横に振った。
「あの子は昔から無鉄砲なところがありました。朝晴からあなたのことは聞いていましたし、きっと朝晴が無茶をしてしまったのだということは何となくわかっていました。私はあなたを責めようなんて思っていません」
その言葉を聞いた時、目頭が熱くなったが何とか堪えた。
「でもあの子……燈里はまだ朝晴の死を受け入れられないと思うんです。父親のいない燈里にとって、朝晴は兄であり父親代わりでもあったから。
いずれ向き合う時がくるでしょう。それまでは……」
「はい、わかっています」
燈里には本当のことは伝えない。
彼女の怒りも憎しみも悲しみも、全て自分が引き受けると決めていたのだから。
親子から離れたが、二人が出てくるまで車の中で待つことにした。
すると、一台の不審な車が墓所の近くで止まる。
嶺士はその車から目を離さないように注視した。