大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜
水鏡母娘が出てきたのとほぼ同時に、車からスーツの男が二人出てくる。
嶺士は更に警戒心を強めた。
その男たちは母娘を無理矢理連れ込もうとした。
すぐに嶺士は駆け付けてあっさりと撃退する。
「怪我はありませんか?」
そう尋ねると、燈里は何故お前がいるんだと言いたいような苦々しい表情を浮かべていた。
顔を合わせたくないと思われていることはわかっていた。
それでもこのまま帰すわけにはいかないため、部下の女性刑事に送らせた。
男たちはその場で現行犯逮捕し、取調べを行う。
その結果、この男たちは不知火に雇われた者だということがわかった。
但し不知火とはSNSを通じて知り合い、直接会ったことはないという。
水鏡親子を連れ去ることに成功すれば、報酬の金が受け取れることになっていたらしい。
嶺士は憤りを覚えながらも、冷静に考えた。恐らく嶺士の推理は当たっている。
不知火は銃弾を受けていながら、体内に埋め込んだままなのだろう。
その報復に朝晴の家族を狙った可能性は大いにあると思った。
(絶対に奪われてたまるものか。二人のことは、俺が命にかえても守ってみせる)
そして嶺士は、とある突拍子もないことを思いつく。
我ながらなんて狂っているのだろうと思った。だが、確実に燈里と母親を守れると思った。
(満咲という大きな後ろ盾から逃れることはできない。だったら最大限に使わせてもらおう)
それが燈里との結婚だった。