大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜
燈里が満咲家の妻となれば、簡単に手出しはし難いと考えた。
また、より近くにいてくれた方が確実に守れる。
(……なんて、ただ俺が彼女の傍にいたいだけなんだろうな)
自分のことを許せないのはわかっているし、愛して欲しいだなんて大それたことは望まない。
だが、嶺士は燈里を愛している。
どうしようもなく惹かれてしまい、今も尚その想いが消えることはない。
許されないとわかっていながら、それでも燈里のことを求めてしまう。どうしようもなく恋焦がれてしまう。
結婚を提示された燈里は、信じられないとばかりに嶺士を見つめていた。
しかし母の身が危ないと聞くと、唇を噛み締めながらも結婚を受け入れてくれた。
卑怯なことをしている自覚はあった。
兄を死なせた憎き男の妻になるなど、耐え難い屈辱だったことだろう。
彼女と彼女の母の身を守るためという大義名分をかざしておきながら、燈里が欲しいというエゴを突き通してしまう自分は最悪な男だと思った。
こんなに悪い男に捕まってしまった燈里が哀れだと思う。
結婚はとんとん拍子に進んだ。
結婚式はもう少し小規模で考えていたが、満咲家の息子の結婚式に警察各関係者を呼ばないわけにはいかないようで。
結局派手な挙式を開くことになってしまった。
ウェディングドレス姿の燈里は自分だけが独占したかったのだが、仕方ない。