大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜
そして迎えた初夜。
子どもが欲しいからと燈里を押し倒した。
契約結婚なのに子どもをつくるとは想定していなかったのか、燈里の表情には戸惑いの色がはっきりと見えた。
だが、そんな表情ですらかわいいと思ってしまう。
「……燈里」
触れるだけの誓いのキスだけでは味わい切れなかった燈里の唇。
まるで濃厚な蜂蜜のように甘く、柔らかい。
一度触れると歯止めが効かず、最早獣のように求めてしまう。
子どもが欲しいのは本当だけど、嶺士は次男だから跡継ぎがどうとかは考える必要はない。
既に兄は結婚しているし子どももいる。
ただただ、この先も燈里を繋ぎ止める理由が欲しかったのだ。
件の事件が解決したとしても、燈里を手離したくはない。
(本当に俺は最悪な男だな……)
いやいやと身を捩らせながら、身体は素直な彼女が愛おしかった。
どこに気力が残っていたのか、唇を噛み付かれた。口の中で血の味が広がるが、これくらいは当然だと思った。
幼い燈里が言っていたような正義のヒーローにはなれなかった。
それどころか彼女にとって、極悪人も同然の存在になり果てる。
「すまない、燈里……」
最奥を貫くと同時にこぼれ出た言葉は、絶頂に達する燈里には聞こえていなかっただろう。
くたりと力が抜けてしまった燈里と繋がったまま、彼女の頬を撫でてキスを落とす。
「愛してる……」
どんなに卑怯なやり方でも、燈里がいてくれるのなら手段は選ばない。
一方的な片想いでも良かった。
燈里のことが守れるのなら、何だってしてやる。
嶺士は愛しい妻を抱きしめ、そのまま眠りに落ちた。