大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜
最愛の人
二人で朝晴の墓前に訪れたのは初めてだった。
思えば、結婚の報告が遅くなってしまった。とは言えこの日報告したいことはそれだけではない。
「やっと奴を捕まえたぞ……朝晴。お前の手柄だ」
九原維澄こと不知火(どちらにせよ偽名だが)は、右肩に銃弾が埋め込まれていた。
その銃弾が朝晴が発砲した拳銃のものであると証明され、動かぬ証拠となった。
ついに仇敵を捕まえることができたのだ。
「お前が命に代えてまで残した証拠だ。ありがとう」
墓前に向かって語りかける嶺士の表情は、普段よりも穏やかに見えた。
「それと……報告が遅くなったが、燈里と結婚した。燈里のことは何があっても守っていくから、その……認めてくれると嬉しい」
嶺士は少し照れたような気まずいような、そんならしくない表情を浮かべていた。
燈里はこれからも守るという言葉にドキッとしてしまう。
朝晴が嶺士の命令を押し切って単独行動に走ったという事実を聞かされた時、朝晴らしいなと思ってしまった。
昔から後先考えずに突っ走ってしまうことがあった。
それも決まって誰かのため。
これ以上不知火のせいで苦しむ人を出さないためという理由は、とても朝晴らしいと思った。
(お兄ちゃんは自分の正義を貫こうとしたんだね……)
もう少し自分のことを大事にして欲しかったけど、兄のことは誇りに思う。
燈里は兄の死と向き合うことができたような気がした。