大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜
「そろそろ帰ろう、燈里」
「はい」
「また来よう」
また、という言葉に胸が高鳴る。
不知火は逮捕された。もう燈里と智佳子を脅かす存在はない。
契約結婚は終了のはずだ。
でも、これからも結婚生活は続くのだろうか。
夫婦をやめなくてもいいと期待しても良いのだろうか。
(私は、嶺士さんと夫婦をやめたくないと思っている……?)
大嫌いなはずだった。絶対に許せない人物だと思っていた。
だけど冷酷な瞳の中には、燈里にだけ見せる甘い熱を孕んでいた。
もうダメだと思ったあの時、嶺士が助けに来てくれてぎゅっと抱きしめられて――ずっと彼の腕の中にいたいと思ってしまった。
言葉通り、燈里を守り抜いてくれた。
誤解が解けた今、嶺士から離れるのが嫌だと思っている自分がいる。
本当はずっと前から惹かれていたのかもしれない。
それでも認めたくなくて、必死で抗おうとしていた。
だが阻むものがなくなった今、嶺士への想いが溢れ出る。
(嶺士さんのことが好き。この先もずっと一緒にいたい)
何故だか泣きたくなってしまう。
好きだと認めてしまったら、もう止められない。
「嶺士さ……っ、うっ」
「燈里?」
「……っ!」
「燈里!?」
急に激しい程の吐き気を催し、立っていられなくなってしまった。
その場にへたり込む燈里を嶺士は慌てて支える。