大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜
「おめでとうございます、妊娠されていますね」
「あ、ありがとうございます」
やはり燈里のお腹には新しい命が宿っていた。
嬉しくて嬉しくて胸がいっぱいになる。
それと同時に嶺士の反応を知るのが怖かった。
嶺士は、どんな反応をするのだろうか。
「どうだった燈里!?」
診察室から出て行くと、待合室にいた嶺士が立ち上がる。
「妊娠、してました」
「本当か!?」
「はい」
すると嶺士は急にふらりとよろめく。驚いた燈里は慌てて嶺士を支えた。
「嶺士さん!?大丈夫ですか?」
連日の激務で疲れていたのかもしれない。
不知火を逮捕した後も裏付け捜査などでずっと忙しくしていた。
「大丈夫だ……」
「やっぱりお疲れなんじゃないですか?」
「大丈夫だ、問題ない」
そう言っていたが、体調が悪そうに見えた。
というより、やはり妊娠に動揺しているのだろうか?
「燈里こそ、体に無理をさせてはいけない。今日は早めに休もう」
「はい……」
嶺士が何も言ってくれないことが寂しかった。
やはりあまり喜んでいないのだろうかと不安に駆られる。
* * *
「おやすみ」
「おやすみなさい」
嶺士と同じベッドで寝るようになってから、同じ時刻にベッドに入る時は必ず求められていた。
基本的に一緒に過ごせる時間が限られているため、一緒に寝ることがあればほぼ必ずだった。
当たり前と言えば当たり前だが、一緒に寝るのに何もしないのは初めてだ。
それが寂しくて、嶺士の背中に向かってポツリと呟く。
「……しないんですか?」