大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜
そんな理由だったの?
まさかの返答に燈里は呆気に取られる。
「あ、もちろんものすごく嬉しいんだ。正直まだ自分が父親になる実感が沸いているとは言い難いが、全力を尽くす。育児の勉強は万全とは言えないが、抱くのは姪で慣れているはずだ。これからもっと精進する。
燈里のことも子どものことも、命をかけて守るから」
生真面目すぎる嶺士らしい言葉だった。
真剣に燈里を見つめる瞳から、嶺士の決意が感じ取れた。
じわりと心に温かいものが広がっていくのを感じながら、燈里は嶺士にぎゅうっと抱きつく。
「命なんて、かけないでください。お兄ちゃんも嶺士さんも、もっと自分のことを大事にして」
「燈里……」
「私はもう、大切な人とは離れたくないです」
嶺士は大きな腕を回し、優しい力で燈里を抱きしめる。
「ああ、絶対に離れない。ずっと傍にいる」
二人の視線が絡まり合うと、磁石に引き寄せられるように唇が重なる。
軽く触れ合うだけですぐに離れたが、すぐに角度を変えてより深く交わる。
「……好きです、嶺士さん」
嶺士からの口付けでとろとろに蕩けさせられた唇から、思わず想いがこぼれ出た。
「……えっ」
嶺士はかなり驚いているのか、燈里をじっと凝視していた。
「大好きです」
「好きにならないんじゃ、なかったのか」
「なりたくなかったですよ」
燈里はぎゅうっと嶺士に抱きついて顔を埋める。
「でも好きです……」