大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜
「迷子になって泣いていたちびっ子が、綺麗になっていて驚いた」
「えっ、迷子?」
「迷子になったのは自分なのに、母と兄が迷子なのだと言い張っていてかわいかったな」
「あ……っ!」
思い出した、確か小学四年生くらいの時に迷子になって号泣したことがあった。
その時声をかけてくれたのは、高校生くらいの少年だったはずだ。
「え……あの時のお兄さん、嶺士さんだったんですか?」
「ああ、おまわりさんは正義のヒーローなんだろう?」
「……!」
それは間違いなく昔の自分だと思った。
当時燈里は少女向けアニメ「ポリスガール・ララちゃん」にハマっていた。
普段は普通の女子中学生のララちゃんが、魔法の警棒でポリスガールに変身して戦うという魔法少女ものだった。
どんな悪にも立ち向かう、真っ直ぐで勇気があって優しいララちゃんは正に正義のヒーロー。
そこから警察官は正義のヒーローなのだという思いが強くなっていた。
「自分より小さな女の子に瞳をキラキラさせながら正義のヒーローになるんだねと言われて、俺は初めて警察官がそんな風に見られているんだと知ったんだ。恥ずかしながらそれまでは深く考えたことがなかった」
「そうだったんですか?」
「燈里のおかげだよ。燈里のおかげで警察官になる覚悟が改めてできたのだと思う。ありがとう」
「そんなこと……子どもの言ったことなのに」
「それでも、俺にとっては大事なことだった」