大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜
嬉しいけれど、自分があまり覚えていないだけに何だか不思議な感覚だった。
「燈里の言うようなヒーローにはなれなかったがな」
「嶺士さんはヒーローですよ、私だけの」
そう微笑みかけると、嶺士も微笑み返して優しいキスをくれた。
もちろん、市民のために日々犯罪と闘っている姿は間違いなく正義のヒーローだと思う。
「言っておくが、惹かれたのは大人になってからだからな」
「ふふっ、そんなのわかってますよ」
まさかそんなに前から出会っていて、再会して今は夫婦となるなんて。
なんて巡り合わせなのだろうと思った。
「俺と結婚してくれてありがとう」
「……嶺士さん」
燈里から腕を回してキスをした。
燈里からキスをしたのは初めてだったからか、嶺士は少し驚いたように目を見開いた後、濃厚で深いキスで返す。
抱き合ったり口付ける度に鼓動が高まるが、やがてお互いの鼓動が重なり溶け合って心地良いものとなる。
大嫌いな人との契約結婚は、いつの間にか最愛の人との幸せな結婚になっていた。
心だけは渡さないと誓ったあの初夜から、今では身も心も彼の愛で満たされている。
お腹の子が生まれたら、教えてあげたい。
あなたのパパは正義のヒーローなんだよ、って。
そんな未来を想像するだけで幸福感に包まれる。
二人の夫婦生活はここからが本当の始まりだ。不安なことも沢山あるけれど、きっと二人なら乗り越えていける。
「これから先も、ずっと愛してる」
「私もです」
fin.