大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜
助けてくれたのは、あの満咲嶺士だった。
嶺士の背後から、部下と思われる刑事たちが駆け寄り、スーツの男たちを捕まえて連行した。
嶺士は無表情で短く部下たちに指示をした後、再び燈里たちに向き直る。
「怪我はありませんか?」
「は、はい……ありがとうございます」
智佳子がそう答えた。
燈里は会いたくなかった男を前にして、どう反応していいかわからず視線を逸らす。
「ご自宅までお送りいたします。どうぞこちらへ」
「結構です」
嶺士は自分の車の扉を開けたが、即座に燈里は拒否した。
「助けてくれてありがとうございます。でも、大丈夫ですから」
「燈里、何を言い出すの?」
「母のことだけお願いします」
すると嶺士は、表情一つ変えずに言った。
「……配慮が足りませんでしたね。部下の女性刑事に送らせます。申し訳ないが、あなた方だけで帰らせるわけにはいかない」
「燈里、送ってもらいましょう」
「……」
自分でも意地を張っている場合ではないとわかっていた。
本当はまだ震えが止まらないのだ。
結局智佳子と二人で女性刑事の車で送ってもらうことになる。だが、帰るのは家ではない。
このまま警視庁で事情聴取を受けることになるのだ。