大嫌い、なのに抗えない。〜冷酷警視との子づくり契約婚〜
燈里と智佳子はそれぞれ別室で事情聴取を受けることになり、燈里は中年の男性刑事が行った。
年季の入ったベテラン刑事といった風貌で、決して口調は強くはないのだが鋭い双眸が威圧感を与える。
だが途中で満咲嶺士が入ってきた。
嶺士の姿を見ると、中年刑事はかしこまったように立ち上がる。見るからに嶺士の方が年下だろうが、明確な上下関係が見て取れた。
嶺士は何かを中年刑事に囁くと、彼は取調室から出て行った。
代わりに嶺士が燈里の目の前に座る。
計らずも嶺士と対面することになり、改めて彼の顔を見た。
艶やかな濡羽色の髪、スッと通った鼻筋、キリリと凛々しい一重瞼。
目つきは悪い部類に入るだろうし、常に無表情で何を考えているのか読めず威圧感が強い。
どんな犯罪者でも相対したら黙らせると言わんばかりのオーラに加え、並外れた美貌も威圧感を与えるには充分すぎるのだ。
自分は被害者のはずだが、何故こんなに高圧的に見下ろされなければならないのか。燈里は不満と嫌悪感しかなかった。
「怖い思いをさせただろう。君のことも母親のことも、我々警察が命をかけて守る」
開口一番、嶺士は淡々と言った。
お兄ちゃんのことは守ってくれなかったくせに。燈里は心の中で毒づいてしまう。
「君たちを襲おうとした奴らは、朝晴を殺した詐欺グループの末端だった」