【完結】国宝級イケメンの華道家は、最愛妻への情愛が抑えられない。
あれから一週間。私は、ドラマの顔合わせの日を迎えていた。
「郁斗さん、これで大丈夫かな?」
「うん、いいと思うよ。指輪は忘れないようにね」
私は、紗綾形に桜の地模様、淡い藤色に淡い珊瑚色、生成色の霞に波、流水紋。橙色、白、抹茶色、淡い香色などの籬に菊の花、橘や梅、葦に桜などが描かれている。そして、金彩や金駒刺繍を施された落ち着いた雰囲気の訪問着を着ている。
髪は軽くまとめてシニヨンにしたシンプルなヘアスタイルだ。
郁斗さんは今日は、来月からあるいけばなパフォーマンスの全国ツアーの打ち合わせがあるらしい。
打ち合わせはリモートらしくお家にいなくてはいけないらしい。
「うん、もちろんです。郁斗さんも頑張ってください」
「ありがとう。そろそろ出ないと遅れちゃうんじゃない?」
「あっ、本当……ありがとう、郁斗さん! 行ってきます」
私は家を出て呼んでいたタクシーに乗ると、テレビ局へと向かった。
テレビ局に行くと打ち合わせの際に渡された入館許可証を首に下げて、バーコードをかざすところに近づければピッと音がして中へと入る。
以前来たコンテンツ制作局ではなく上の十階【ドラマ制作編成局】であるらしく、そちらへ向かう。