【完結】国宝級イケメンの華道家は、最愛妻への情愛が抑えられない。



「鳳翠先生、おはようございます」

「本郷さん。おはようございます……あ、今日からお世話になります」


 エレベーターに乗るとすぐ入ってきたのは本郷くんだった。一応仕事の場なので、さんと呼ぶ。


「前と同じ、くん呼びでいいよ。こちらこそお世話になります、きっとかなり。一緒に会場まで行こう」

「……ぜ、ぜひ。迷子にならないか心配だったので会えてよかったです」


 すぐに十階に到着して降りて会場である【ドラマ制作編成局】リハーサルA-1室に向かい、【月森鳳翠様】と書かれた席に座った。
 それからゾロゾロと人が集まってきて席が埋まると、自己紹介から始まる。

 この前挨拶してくださった佐々木プロデューサーが司会らしく、佐々木さんから始まり脚本家の本郷くん、監督や演出の方に出演者の方々にと順に自己紹介がされていく。


「……日本舞踊監修と指導を担当させていただきます、月森鳳翠です。よろしくお願いします」


 他の人は一言二言言っていたが、初心者にはこれが精一杯だ。
 だって、テレビで見たことのある俳優さんがたくさんいらっしゃるんだもの……緊張しかない。

 全員紹介が終わると、ちゃんとした台本が渡された。三冊あって、一話から三話までの台本らしい。今日は一話の本読みがあるけど、私は聞いているだけだ。


「――……〜」
 初見のはずなのにもう形になっていて驚いてしまう。国語の音読みたいなものだと思っていた自分が恥ずかしい……本当にすごい。

 それに出演者の方が豪華だ。 

 だって、この作品の主人公・咲子(えみこ)は現在人気絶頂中の透明感のある期待女優といわれている里谷(さとや)茉縁(まゆか)さんで、前に朝ドラのヒロイン妹役をやっていたことで有名だ。
 そして、師範・花堂役に国民的人気アイドルグループに所属されている舜也(しゅんや)さんで四十代なのに爽やかな男性でイケおじと言われている。

 その他の俳優さんも素晴らしすぎる。主人公の両親役の方も大御所俳優と言われる方だし……私はここでやっていけるのか不安だ。


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