【完結】国宝級イケメンの華道家は、最愛妻への情愛が抑えられない。
「……緊張してます? 鳳翠先生」
「はい。もう緊張どころじゃないです、不安です。同じ場所なのに、不安しかないです」
公演のシーンは、千曲流日本舞踊会館で行われることになった。私が踊るのは大好きな『藤娘』だ。
メイクさんはいつもしてくれている千曲流の専属メイクアップアーティストさんにお願いしている。
「鳳翠先生も緊張するんですねぇ。いつも堂々としているし、そういうのとは無縁だと思ってましたよ」
「いつも緊張はしていますよ。でも、本格的なカメラが入るのは初めてなので」
「そうなんですか、よし……紅を付けますね」
すると、完全にいつもの藤娘の衣装を着た千曲鳳翠がいた。