【完結】国宝級イケメンの華道家は、最愛妻への情愛が抑えられない。
「月森さん、スタンバイお願いします!」
「……はい、行きます」
私は立ち上がると控え室を出た。
まだ幕が上がっていない舞台に足を進めると大きな藤の木がある場所で幕に背を向けた。
小道具を受け取り、大丈夫だとサインを送る。すると、舞台の灯りが全て落ち幕が上がる。長唄が聞こえ、灯りがついた。
そのタイミングでくるりと振り返った。
いつも通りで大丈夫、今からは何も考えない。ここにいるすべての人に満足してもらえるような踊りをするだけだ。
無事、踊りが終わり幕が閉じた。完全に幕が閉じると、小道具さんが近くに来て小道具を受け取りに来る。
「お疲れ様でした、鳳翠さん。今日もよかったです」
「ありがとうございます。オッケーだといいのですが……」
公演の時とは違い、ダメだったら監督から言われるって聞いていたのだけど……誰も来ないな。
舞台から降りていいかな、と思い袖に戻ればそこには監督と演出家の方がこちらにきてOKだったようで私の撮影は終わったらしい。撮影は終わり今日は私は帰っていいらしく着替えをしに控え室に向かう。
「お疲れ様でした、お先に失礼いたします」
スタッフの人に見送られ、控え室で着替えをし終え普段着の着物に着替えをして挨拶をしてこの場を後にした。