【完結】国宝級イケメンの華道家は、最愛妻への情愛が抑えられない。
「じゃあ、お疲れ様。月森さん」
「はい。お疲れ様でした――」
本郷さん、と言おうとしたのに私を呼ぶ声で遮られた。その声の主は、久しぶりに見る紺色の着物を着る美青年で紳士帽を被りサングラスをかけていた……とても似合っている。隠しているんだろうけど、オーラが隠せきれていない。
「百合乃、お疲れ様」
「郁斗さん……近くなったら連絡するって」
「百合ちゃんに、早く会いたかったんだ」
郁斗さんは私の手を取り、指を絡めて繋ぐ。すると「……君は」と本郷くんを見て呟く。
「初めまして、本郷といいます。月森さんにはお世話になっております」
「華道家の月森耀壱です。いつも妻がお世話になっています」
二人は何か異様な空気を醸しながら、何故か名刺を交換している。
「じゃあ、本郷くん。私、帰るね。送ってくれてありがとう。また明日」
「あ、うん。お気をつけて……では、失礼します」
本郷くんは郁斗さんにも挨拶をして喫茶店がある方向へと去っていった。
彼の後ろ姿を見送ると、私は郁斗さんとテレビ局を出れば駐車場まで歩き郁斗さんの車に乗る。