【完結】国宝級イケメンの華道家は、最愛妻への情愛が抑えられない。
お辞儀がある程度できるようになると、次にお扇子の扱い方を学ぶ。扇子は紙と骨と要、なまりで出来ているため上に投げてもなまりが入っているため要から降りてくるようになっている。
扇子は、胸の高さで持ち親骨を一つ開き平らに奥へと広げていく。握り込みで持った扇子を右膝につけ、左手を手前に立てて手のひらで前に閉める――それが扇子の開き方だ。
それからすり足と呼ばれる基本の足の運びを説明をしながら実践してもらう。
「姿勢を正しくして腰を入れてから正面へ足を滑らすように足の裏が地面から離れないようにして重心がぶれないように気をつけてね」
すり足が上手くできるようになったら、夏の練習成果発表会の時に踊る課題曲で箏曲の『さくらさくら』のお稽古を始めるために私が一度踊る。
どんな踊りかを見てもらい自分で踊るイメージを想像してもらうために必要なことなので丁寧に踊った。
一時間の稽古が終わり、お辞儀をして終わった。皆が出ていくのを見送りをして戸締りをすると稽古室から休憩室に移動した。
「お疲れ様です」
休憩室に入ると珍しく兄が一人コーヒーを飲んで寛いでいた。それになぜかスーツ姿だ。