【完結】国宝級イケメンの華道家は、最愛妻への情愛が抑えられない。
「このコーヒー百合ちゃん好きだって言っていただろう? だから買ってきたんだ」
「ふふ、ありがとうございます」
私はマグカップに口をつけ、一口飲む。香りは少しきついけど、相変わらず美味しい。
「そういえば、今日はお祖母様と約束してるって言っていたよね? 本家に行くのかい?」
「はい。もうドラマのお仕事終わっているのでテレビ局には今日は行かないので。それにお祖母様にお誘いをいただいて……ドラマが放送されるお祝いだって言っていました。でも郁斗さんはお昼はお仕事なんですよね?」
「うん。結婚式を挙げたホテルでパーティーがあるから会場ディスプレイを頼まれてね」
「そうなんですか、頑張ってくださいね」
郁斗さんはツアーが終わっても大忙しで、会場ディスプレイや展覧会の花に家元としてのお稽古とお仕事がたくさんある。
本当は私が付いて支えるべきなんだろうけど私も忙しかったのは言い訳か……だけど、ドラマが終わったら師範の仕事は引き継いでもらい華道の方に力をいれていこうと思っているし彼のお手伝いもできるようになるだろう。
「本家行くなら俺が送って行くよ。顔を見せようと思ってるんだ」
「ありがとうございます、郁斗さん」
「全然。それより、百合ちゃん。調子悪い? 顔色悪いけど」
「えっ、そうでしょうか……そんなことはないと思いますが」
確かにコーヒーの香りがきついなと思ったけど体調が悪いわけじゃない。少し疲れが溜まってるんだと思う。
それに治ったけれど少しだけ風邪気味だったし、それもあるかもしれない。