【完結】国宝級イケメンの華道家は、最愛妻への情愛が抑えられない。
「体調悪いなら言ってね。もう……誰かを失うのは嫌なんだ」
「あ……ごめんなさい。疲れてるだけだと思います。私は大丈夫なので、心配しないでください」
きっと誰かというのは姉のことだ。姉が病気だったこと気付かなかったと言っていたから。
やっぱり、姉のことが今も好きなんだと思う。どれだけ好きだとか愛しているとか言われても、私を通して……姉を見てるんだと思う。
「……百合ちゃん?」
「す、すみません。着替えをしてきます」
「うん。分かった」
私はリビングから自室に行き、着物を選ぶ。暑くなってきているから通気性のいい絽の着物を選んだ。
深い青紫色地の上に綺麗な流水に白椿が描かれていて、郁斗さんがお土産で買って来てくれた反物を仕立ていただいたものだ。帯は、白地で献上柄のもので華皿の模様がとても綺麗な私のお気に入りを手に取りパパッと着替えた。