【完結】国宝級イケメンの華道家は、最愛妻への情愛が抑えられない。
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「……どうしたの? 百合乃ちゃん」
「えっ……あ、すみません」
郁斗さんに月森本邸に送ってもらって、今はサクラさんとお義母さまといけばなの最中だ。
「体調は大丈夫? 最近は忙しかったみたいだもの、疲れが出ているんじゃない?」
「そうかも、しれません」
いや、違う。ただ姉にヤキモチを妬いてイラついて勝手に悲しんでいるだけだ。
「郁斗も仕事でいないし、寂しいわよね」
「そうですね、でも、私も好きにお仕事させていただいていますし夜は毎日電話もしていたので」
「あら、そうなの? 郁斗、毎日電話する子だったのね。妃菜乃ちゃんと婚約していた時は淡白な感じで、用事がないと連絡しないって言っていたのに。なんだか、業務連絡みたいでビジネスっぽい感じだったのに。仲は良かったみたいだけど」
それは初めての情報だ。
でも確かに、連絡取り合っている様子はなかった気がする。
会う日も月に一回しか聞いたことないし……だけど、もしかしたら言っていないだけで会っていたかもしれない。大人だったから報告の義務はないんだし。
「そうなんですか? でも婚約期間もほぼ毎日連絡ありましたし時間があれば会いにきてくださってましたけど……」
「百合乃ちゃんは特別だったのかしらね」
お義母様はそう言えば、サクラさんもそれに同意するように頷く。
「あの子はねぇ、百合乃ちゃんがずっと――」
サクラさんの言葉を遮るように「失礼致します」と家政夫さんの声がした。
「大奥様、奥様、若奥様。お茶会の準備が出来ました」
「あら、もうそんな時間なのね……じゃあ、いけた花を飾ってもらいましょう」
サクラさんはそう言って家政夫さんに私たちがやったものを玄関と大広間と応接室に飾っておいてと頼むと、ここから茶室へと移動した。