【完結】国宝級イケメンの華道家は、最愛妻への情愛が抑えられない。



「百合ちゃん、おかえり」

「ただいま……え、郁斗さん! どうしてここに」


 機嫌よく生けていれば声をかけられた。その人はここにいるはずがない郁斗さんだ。


「家元に話があってね、綺麗だな」 

「はい、オレンジ色のスカシユリ大きくて立派で」

「スカシユリも綺麗だけど、百合ちゃんの生ける花が綺麗だなと思って」

「郁斗さんにそう言ってもらえるなんて嬉しいです」


 家元である郁斗さんに言ってもらえるのはとても嬉しいし光栄なことだ。



「本当のことだよ。そうだ、天野屋のお菓子を持ってきたからみんなで食べて」


 天野屋のお菓子とは、老舗和菓子屋である『御菓子司・天野屋』という人気の和菓子屋で雑誌にも特集で組まれるようなお店。
 一度、テレビで取材されてからいつ行ってもすごい行列だと聞いたことがある……門下生からの情報だけど。


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