【完結】国宝級イケメンの華道家は、最愛妻への情愛が抑えられない。



「百合乃、話があるんだ。座りなさい」

「え……? あ、うん。はい」


 何かあったかなと思いながら座ると、お母さんが三人分のお茶を持ってきた。


「話って何?」

「あぁ、……百合乃は今付き合っている人いるのかい?」

「え? いないよ、忙しいし好きな人もいないし……それがどうしたの?」


 お父さんはお茶を一口飲むと「うん」と言い、一呼吸おく。



「……百合乃に縁談が来た」

「え? 縁談?」

「そう。縁談だ。もう百合乃も二十八歳だし、そろそろ考えないとだよ。俺たちは二十五歳で結婚したから遅いくらいだよ。それに百合乃を望んでいるし、日本舞踊も続けてもいいと言っている」


 ……と、ことはこれは強制的で拒否権は私にはない。それに千曲家にも利がある縁談だろうと感じる。
 
 由緒正しい名家で日本舞踊の名門の家だからいつかは政略結婚するだろうと思っていたし今までそういうう話がなかったのも不思議なくらいだ。


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