【完結】国宝級イケメンの華道家は、最愛妻への情愛が抑えられない。
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縁談を受けたはいいが、そのお見合い当日に何を着ていくのかわからないままだった。
「時間がないだろうし私の振袖を着ればいいわよ。手直しをしてもらいましょう」
数日経ち、お母さんの一声で呉服商がその日のうちにやってきた。
お母さんの振袖は、千曲家直系女子が受け継いでいる着物だった。お母さんもお祖母様から受け継いだ振袖らしい。
尾形光琳が手掛けた着物で白綾の絹地に菊や萩、桔梗、芒などの秋の草花を藍で描き、黄色や淡い紅色でぼかしを入れた華やかだが落ち着いている振袖だった。だけどこのまま着るとなると時代遅れになるからと呉服商には帯に帯締めや帯揚げ、重ね襟を持ってきてくれた。
金の菊と華紋で西陣織の袋帯に帯締めはヒワ色のグリーン系で帯揚げは藤色、重ね襟は今時っぽく白レースにオフホワイトのパールがついた物を選んだ。